ABUのドールハウス

12分の1サイズのドールハウスを制作しています。

ドールハウスとは

『ドールハウス』とは、生活空間をミニチュアサイズに縮小した建物や部屋の中に表現したものです。 その中にはミニチュアサイズの家具や道具などが並べられ、見る人を楽しませてくれます。

ドールハウスは、アメリカでは『Dollhouse』、イギリスでは『Dolls' House』、 ドイツでは『Puppenhaus』、日本では『ドールハウス』もしくは『ドールズハウス』と 呼ばれています。

海外のドールハウスでは人形が中に置かれることもありますが、人形のありなしは、 ドールハウスにとって重要な問題ではありません。 日本では人形を入れたドールハウスはあまり好まれないようです。

ドールハウスの歴史

今日、私達がドールハウスと呼んでいるものが最初に作られたのは、16世紀の初め頃で、 発祥はドイツとも、オランダとも言われています。 記録に残る最古のドールハウスは、1558年、現在の南ドイツ、 ババリア(バイエルン)地方の公爵アルプレヒト5世(Albrecht V. von Bayern)が娘のために作らせたものです。 このドールハウスは1674年に焼失しましたが、1599年に作られた目録に詳細に記録されています。

Nuremberg House
(C) Germanisches National Museum

現存する最古のドールハウスは、ニュールンベルグのドイツ国立博物館に展示されている1611年に作られた『ドッケンハウス(Dockenhäuser)』です。 1611年といえば日本では江戸に幕府ができたばかりの頃です。 この頃に、オランダ、ドイツ、イギリスの王侯貴族が自分の屋敷を縮小して特別注文で作らせたのがドールハウスのはじまりとされています。

16世紀のオランダ(北部ネーデルラント)はスペイン・ハプスブルク家の所領でしたが、1588年にネーデルラント連邦共和国を樹立して80年にわたる戦争の末、 1648年にスペインからの独立を果たしました。また、1602年にオランダ東インド会社を設立して、ポルトガルから香料貿易を奪取して世界の海に覇権を称え、 17世紀の共和国は黄金時代を迎えました。 この黄金時代に、オランダを代表する美しい象嵌細工で飾られたキャビネット式のドールハウス(cabinet house)が作られ、オランダ国立博物館に所蔵されています。

ドールハウスの本場と言われるイギリスでは、ドイツ、オランダから17世紀後半にドールハウスが伝えられたといわれています。 アン王女の治世1707年にイングランドとスコットランドの合同法が成立してグレートブリテン王国が成立しました。 この頃からイギリスでもドールハウス(当時はベビーハウスと呼ばれていた)の人気が高まり、精巧なドールハウスがたくさん作られました。 イギリスでは18世紀に蒸気機関などの新技術が開発され世界に先駆けて産業革命が進展しました。 この時代の流れの中で、1924年に記念すべきドールハウスが誕生しました。 ウィンザー城にある「メアリー女王のドールハウス(Queen Mary's Dolls' House)」です。 ここにはイギリスの当時のアートとテクノロジーが結集しています。

はじめは王侯貴族が職人に特別注文で作らせていたドールハウスが、18世紀末になると産業革命の影響で、 既製品として作られたものが出回りはじめ、 19世紀半ばにはさらに安価な量産品が作られるようになり、その後、大西洋を渡ったアメリカでクラフト産業がサイズを統一したキットや完成品、 部品を売り出し、庶民に手の届くホビーとして普及しました。

参考文献:「ドールズハウスへの招待」 (著) 新美 康明

ドールハウスのサイズ

今日では1/12(12分の1)サイズがドールハウスの標準サイズとして通用しています。この1/12サイズは、1"(1インチ)サイズとも呼ばれ、 1フィートを1インチで表します。これはイギリスの12進法に基づいたサイズです。この1/12サイズは、 イギリス(イングランド)のウィンザー城に展示されているメアリー女王のドールハウスの成立をきっかけとして確立しました。 このドールハウスは、1921年にミニチュア好きのメアリー女王に英国の国威をかけたドールハウスを贈りものとしてささげるという意図で 1,500人の職人、芸術家、作家が動員され、3年の歳月をかけて、1924年にロンドンの大英国展、1925年にアイディアル・ホーム・エキシビジョンに展示され、 1925年7月にウィンザー城の1室に収まりました。1/12サイズが確立したことで、ドールハウス製作の分業化、および、部品の標準化、流通化が可能になりました。

1/12サイズが確立する以前に作られたドールハウスのサイズはまちまちです。1/12サイズよりも大きめに作られることが多かったようです。

欧米の生活に根付くドールハウス

ShoppingMall

欧米(特にドイツ、オランダ、英国、米国)では、ドールハウスは王侯貴族の趣味を超え、教育玩具として生活に根付いています。 初期には、王侯貴族が子女のしつけの道具としてドールハウスを活用しました。 また、オーストラリアのドールハウス愛好家に聞いた話では、祖父母が孫娘に手作りのドールハウスをプレゼントするそうです。

左の写真はテキサスのとあるショッピングモールで、婦警さんがドールハウスを使って子供たちに非常時の逃げ方を教えている様子です。 このようにドールハウスは欧米の生活に根付いた存在です。

また、アメリカのアニメや映画などを見ていると女の子の部屋にドールハウスがなにげなくあったりします。

日本のドールハウス界の年表

1979年
おそらく日本ではじめての『ドールハウス展』(東京、礒貝吉紀さん)
E.H.エリックさんがミニチアクラブを設立
1981年
ドールハウスの世界―夢をクリエイトするミニチュア・ライフ (1981年)』(クニエダ ヤスエさん、村上 一昭さん共著)
1983年
楽しいドールハウスづくり―夢のミニチュア・ワンダーランド』(村上さん他 共著)
近藤晴葉さん、福岡に『ドールハウスK』開店
1984年
ドールハウスづくりABC―ミニチュアのお楽しみランド』(村上さん著)
ミニチュア専門店『グルベア』(東京・青山)開店 (98年に閉店)
1985年
新宿のカルチャーセンターでドールハウス教室開校 (講師:村上さん)
『生活文化のミニチュア展』開催
1986年
『東京ドールハウスクラブ』 発会
ドールハウスづくりABC』(村上さん編著)
かわいいパン粘土づくり―小さなウサギさんからおしゃれな小物まで』(佐藤 里香さん著)
『トーイ&ミニチュア博物館(カンザスシティ大学)展』が全国10都市を巡回
1989年
青木實さんIGMAアーティザンとなる
ドールハウス ローラの小さな家●NHK婦人百科』(村上さん著)
1990年
『エンジェル・アティックミュージアム(サンタモニカ)展』開催
1993年
『プッペンハウス ヨシノ』 (伊豆、吉野さん)開館 (2002年に休館)
1994年
『世界ミニチュアフェスティバル』(フランス)に『日本のお店シリーズ』出展
『The White House in Miniature』来日(東京・晴海)
1995年
ドールハウスを習う―部屋と家具づくりから』(関 美代子さん著)
夢工房ドールハウス (No.1) (ブティック・ムック (No.161))』(ブテック社) 創刊
私のドールハウス―「私の雑貨」特別編集 (Gakken Interior Mook)』(学研) 創刊
1996年
『ガレッジ カレッジ』 (東京、田中さん)開校
『綾ミニチュアワールド』 (宮崎、青木實さん)開館 (2001年に閉館)
『ロンドン・ドールハウスフェスティバル』に『日本のお店シリーズ』出展
中村和子さんIGMAアーティザンとなる
『デラウェア博物館コレクション展』(東京) 開催
『ドールハウスのML』誕生(久保さん、2001年に廃止)
1997年
『日本ドールハウス協会』 発足
銀座プランタンにドールハウスショップ『ミシール』開店(2004年に文京区に移転)
『TVチャンピオン 第1回ドールハウス選手権』放映 (TV東京)
1998年
『ドールハウス・ジャパン』 設立、モッツコレクションを購入
『世界のドールハウス展』(おかざき世界子ども美術館)開催
『英国の素敵なドールズハウス展』(大阪)開催
『三浦宏 匠の世界と夢のドールハウス展』(東京)開催
1999年
東京・代官山に『フェアリーテール』開店(2003年に閉店)
『第1回東京インターナショナルミニチュアショウ』 開催(この年より毎年開催)
『ドールハウス展』(東京、ドールハウス・ジャパン)
2000年
『ジャパンギルド《日本ミニチュア作家協会》』 発足
『第1回ジャパンギルド・ミニチュアショー』 開催(この年より毎年開催)
『大庭ひろこ帰国記念作品展』(東京)開催 開催
『インゲボルグ・リーサ婦人コレクション展』が全国を巡回
2001年
『週刊マイ・ドールズ・ハウス』創刊
『手のひらの美 ミニチュアの世界・小林礫斎を中心に』(東京・京都・神戸)開催
『今清水英一コレクション「美似の日本」展 』(大阪)開催
『ドールハウスML』開設(ミシール)
2002年
『礒貝吉紀作品展 ドールハウスとともに30年』(東京)開催
2003年
『英国ドールハウス展(Maple Street博物館)』(東京・横浜)開催
ドールズハウスへの招待』(新美 康明さん著)
2004年
『徹子の部屋』に礒貝吉紀さん出演
2005年
『第1回ジャパンギルド・ミニチュアショー in OSAKA』(大阪)開催
2006年
『ヨーロッパのドールハウスとミニチュア展』(エルツおもちゃ博物館)開催
『第1回大阪インターナショナルミニチュアショウ』(大阪)開催
2007年
ミニチュアの世界「小さな愛しきもの達」 (創作市場別冊 (23))』出版(マリア書房)
2008年
『ミニチュアの世界』開催(東京・日本橋丸善)
2009年
『Noe Cafe』開店(東京都練馬区平和台)
2010年
『cafe copiLuak(コピルアック)』開店(名古屋市中区)
2012年
ドールズハウス―ミニチュア世界の扉を開く』(新美 康明さん著)
田中智のミニチュアワーク (Handmade Series)』(田中 智さん著)
2014年
ドールハウス教本vol.1 「パリの街角」 (亥辰舎BOOK)』(小幡 耕一さん他著)
田中智のミニチュアコレクション (Handmade Series)』(田中 智さん著)
Facebookグループ『ドールハウスとミニチュア』開設
『香港ミニチュア展』(東京・池袋サンシャインシティ)
2015年
ミニチュアワールド: 中村和子の世界』(中村 和子さん監修)
2016年
『マツコの知らない世界』星夏子さんの紹介するミニチュアの世界(田中智さん)
『マツコ&有吉の怒り新党』新3大 こだわりがハンパない ドールハウス(工藤和代さん、遠藤大樹さん、島木英文・啓子さん)
『箱根ドールハウスミュージアム』(箱根、新美さん)開館(7月15日)

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